SEには取得しておかなければならない資格は存在しません。しかし、転職が優位になる資格や昇進に関わってくる資格は存在します。
IT系の資格は幅が広く、国家資格からベンダー(一般企業の)資格まで数多くの資格がありますが、不用意に手当たり次第受けるよりも明確な目的を持って取得すべき資格を選ぶとよいでしょう。
ここでは、転職に役立つ資格、SEとしてキャリアを積む上で必要な資格を一覧で紹介します。おすすめの資格ばかりですので、自分のなりたい姿と照らし合わせながらご覧ください。
目次
最初は基本情報技術者試験
数多くある資格のなかで高確率で必要となるのが基本情報技術者試験です。情報処理推進機構(IPA)というところが運営している国家資格で、多くの企業では積極的に取得を促されます。
そして高確率で出世に関わってくる資格です。資格の有無と現場での実力派必ずしも比例しないのですが、人事部としては絶対的な評価基準が1つ欲しいと考えているのでしょう。
取得していない状態で入社すると、「○年以内に基本情報技術者試験をとってくださいね。」とアナウンスされるはずです。仕事と平行しながら資格勉強を行うのは中々厳しいこともあり、できることなら就職前に取得しておきたい資格ではあります。また、転職時に持っていると間違いなく評価アップのポイントになります。
ですから、IT系資格の1つ目は間違いなく基本情報技術者試験がおすすめです。
基本情報技術者試験の内容と難易度
基本情報技術者試験は毎年春と秋の2回実施され、合格率は20%です。数字だけ見ると非常に難しい試験に思われるかもしれませんが、実情は応募だけして試験会場に行かない人が多いため合格率も低いものとなっています。
とは言っても難しいことは難しく、一夜漬けで合格できるようなものではありません。しっかりと計画を立てて取り組む必要があり、事前知識がある方であれば1ヶ月、全く知識がない方は数ヶ月から1年かけて勉強していく必要があります。
問題の回答は全てマークシートで行い、出題方法は4択が基本です。
基本情報技術者試験の傾向としては過去問題と類似問題が出やすいため、最もオーソドックスな勉強方法としては、何度も繰り返し過去問題を解くことです。
情報処理技術者試験とは?
情報処理推進機構(IPA)が運営する国家資格は基本情報技術者試験だけではありません。基本情報技術者試験が最も有名で基本となる資格ですが、その上に積み重なるように上位レベル資格が多数存在します。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験制度:試験区分一覧より
難易度としては基本情報技術者試験が最も簡単で、次に応用情報技術者試験、その上に各種専門的な資格が並ぶといった形です。
ちなみに、基本情報技術者試験の下位レベルとしてITパスポートが存在しますが、難易度が低すぎるため多くの企業で評価されるものではないため取得する意味合いは薄いです。
情報処理技術者試験を難易度別に一覧でまとめました。
難易度 | 資格名 | 略称 | 実施日 |
---|---|---|---|
低 | 基本情報技術者試験 | FE | 春・秋 |
中 | 応用情報技術者試験 | AP | 春・秋 |
高 | ITストラテジスト | ST | 秋 |
システムアーキテクト | SA | 秋 | |
プロジェクトマネージャー | PM | 春 | |
ネットワークスペシャリスト | NW | 秋 | |
データベーススペシャリスト | DB | 春 | |
エンベデッドシステムスペシャリスト | ES | 春 | |
情報セキュリティスペシャリスト | SC | 春・秋 | |
ITサービスマネージャ | SM | 秋 | |
システム監査技術者 | AU | 春 |
資格の名称を見てもらうと分かりますが、応用情報技術者試験を境にどんどん専門的な資格になっていきます。基本情報技術者試験から入り、実務を通じて自分のSEとしての進みたい道が固まり始めたら専門的な資格の取得を視野に勉強を始めるのが良いかと思います。
ベンダーのおすすめ資格
ベンダー資格とは、各企業が独自に行っている資格です。国家資格と違いなんでもありの玉石混交(ぎょくせきこんこう)なので、中にはどうでもいい資格もたくさんあります。
どういったベンダー資格が良いかというと、簡単に言えば有名な資格です。資格を持っているメリットは、実力を客観的にアピールできる名刺代わりになることです。誰も知らないような資格を習得していても何の意味もありませんので、持っていても無駄になるだけです。
IT技術者が好んで取得するベンダー資格はたくさん存在します。その中で、多くの技術者が取得して良かったと感じているおすすめのベンダー資格を分野ごとに紹介していきます。
技術 | 資格名 |
---|---|
Linux | Linux技術者認定試験 |
Java | Java認定資格 |
ORACLE | ORACLE MASTER |
ネットワーク | Cisco技術者認定 |
Android | Android技術者認定試験 |
有名なベンダー資格を挙げました。中でもAndroid技術者認定試験は最近登場した資格なのですが、市場のニーズとマッチして受講者が急上昇している資格です。
ベンダー資格のメリット・デメリット
個人的にベンダー資格は取得しても取得しなくてもどちらでも構いません。昇給に響くこともなければ、給料に響くこともありません。しかし、取得するに越したことはありません。以下のメリット・デメリットを見て取得するかどうかを決めるといいでしょう。
ベンダー資格のメリット
SEに限らずIT系の仕事は向上心を持ち続けて仕事に取り組むことが大切な職業です。
勉強のモチベーション維持を目的として、ベンダーの資格を目標に自分の技術力を磨こうと努力することもできます。また、会社によっては資格取得支援として合格したら○○円ボーナスあげるといったところもあります。
自分の勉強意欲の維持のために資格の取得を検討するのもいいでしょう。
また、基本情報技術者試験などの国家資格と比べるとベンダー資格を持っている人は少ないです。ですから、転職活動においてはベンダー資格を持っているだけで有利になることもあります。特にAndroind、Javaは今最も勢いのある分野なので、アプリを開発している企業であれば喉から手がでるほど欲しい人材です。
もうひとつ大きなメリットとして、国際的に通用する資格であるという点です。国家資格はあくまで国内限定ですが、ベンダー資格は世界的に利用されている企業が運営している資格です。Linux、Javaなど一定の水準があることをどこにいっても証明できます。
ベンダー資格のデメリット
国家資格と違いベンダー資格は企業のビジネスです。つまりお金儲けを意識して運営しています。
試験料は国家試験と比較してもかなり高いです。国家試験は一律5,000円代のところ、ベンダー試験は最低でも1万円以上はかかります。
個人的な考え方としては、まずは国家試験から狙っていき、ある程度制覇したらベンダー試験に手を出していけばいいのではないかと思ってます。
IT資格の人気ランキング
各種資格の受講者数を元にIT系資格の人気ランキングを作成しました。どの資格を受けようか迷っている方は参考にしてみてください。
IPAの国家試験は公式のアナウンスを元に、ベンダー試験は累計からおおよその数字を出しています。
No | 資格名 | 受講者数(年) |
---|---|---|
1 | 基本情報技術者試験 | 15万人 |
2 | 応用情報技術者試験 | 10万人 |
3 | 情報セキュリティスペシャリスト | 6万人 |
4 | データベーススペシャリスト | 2万人 |
ネットワークスペシャリスト | ||
プロジェクトマネージャー | ||
5 | Linux技術者認定試験 | 1万人 |
6 | Android技術者認定試験 | 5千人 |
やはり上位は国家試験が並びます。企業や学校が団体で応募していて積極的に取得を促進していることが大きな要因でしょう。
国家資格の中を見てみると、総合的なITスキルを証明する基本情報技術者試験、応用情報技術者試験と並び、上位の専門的な技術資格では、情報セキュリティスペシャリストが断トツで一位です。春・秋の2回試験が行われることもありますが、世の中の需要の現れだとも思います。
IT業界のセキュリティ意識は異常なまでに強くなっています。一つの情報漏えいが企業の存続を揺るがしかねない事態につながることも珍しくない時代ですからね。ベ●ッセの漏洩事件がつい先日のことのように思い出されます・・・。
その他ベンダー系の資格も数千から数万の規模です。Oracleなどは公表してませんが、おそらく同じくらいの水準であると予想します。
SEに資格は必要?本当に必要なスキルとは?
なんども言いますがSEなるために必須の資格はありません。しかし、昇格に響く場合があるので会社によっては最低でも基本情報技術者試験は取得しておいた方が無難という話です。
SEはどちらかというと実力の世界です。資格を持っているからとって実務で優位になるといったことはあり得ません。資格をとって安心しようとしている人はそもそもSEとして向いていないとわたしは思います。
では、SEとして必要なスキルとは一体なんでしょうか?人間的な部分にフォーカスして紹介していきます。未経験から転職する場合は資格より人間的な可能性をアピールしましょう!資格はそのおまけです。
向上心
資格取得にも絡めやすい項目ですね。SEは向上心を持ってないと続けていけません。多忙な業務内容、求められる数多くのスキル、半端ないスピードで進歩する技術。向上心はSEにとって最も必要なスキルであるといっても過言ではありません。
資格を取得しているということはもっと学びたいということをアピールできる1つの材料になります。
コミュニケーション能力
SEはお客様を初め、プロジェクトメンバー、パートナー会社など、様々な人とコミュニケーションを取りながら案件を進めていきます。
スケジュールどおりに円滑に進めるためには関わり合う人との認識がズレることなくコミュニケーションが取れることが大事になります。パソコンの前に座っているだけのイメージが強いSEですが、実はコミュニケーションが取れないと仕事にならないのです。
問題解決力
システム開発の現場では頻繁に問題が起こります。SEはシステムに対して責任を持つポジションなので問題が起きた時に先頭に立って動くのはもちろんSEです。
そこで問われるのはSEの問題解決力です。優秀なSEは問題を迅速に解決します。SEに求められるのは、何か問題が起きた時に素早く対応できるには問題の原因を明確に、解決までの道筋を示し行動できる人です。
まとめ
資格の話をしていたのに、最後には人間性の話になっていました。
文中で何度も話してますが、SEとして必須な資格はありません。ただし、大抵のSE会社で取得させられる「基本情報技術者試験」だけは時間に余裕がある内に取得しておいた方が入社後に少し楽ができるはずです。
資格を取得することに快感を覚えたらさらに上位の資格を取得するもいいですが、SEとして大切なのは、資格よりは現場での力です。
- 問題が起きた時に最短ルートで解決できるか
- メンバーやお客さんと仕事上で上手くコミュニケーションを取って進めていけるか
- 計画性を持って納期に間に合うように案件を進めていけるか
こういったことを現場でどれだけ経験して身につけているかがSEとしての力となります。
資格はあくまでも「おまけ」です。
SEとして働く以上は、資格では測れない部分をどれだけ鍛えられるかが、どこの現場でも通用する人になる鍵ではないかと思います。